「もう犬はいらない」

子供を持つ親の立場からすれば、事態はより深刻です。

普段は比較的、放射能の線量の低い安全区でも、風の向きや日々の天候などにより、線量計はグンと跳ね上がります。

「20キロ圏内で暮らす」ということは、放射能という見えない危険物質に怯え、緊迫した日々を過ごすということです。

少しの体調の変化にも過敏になり、一瞬の気の緩みも許されない日常と、将来への不安を抱えての生活。

「とてもペットを引き取るどころの話ではない」というのが、被災した人たちの本音です。

20キロ圏内では今でも、ペットたちが飼い主のお迎えを待っています。

「おいで」と呼べば、ブルブル、ガタガタと震えながら近づいてくる犬。

人間を信じているからこその行動です。

それを見れば、どれだけ大切に愛されていたかと、一目で分かるのに・・・。

「もう犬はいらない」という人もいます。

誰が悪い訳でもない、誰も責められない、それは分かっています。

それでも、ペットの立場になれば、やはりやるせない気持ちになるのです。

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