命の境界線
互いに体を舐め合う牛、鳴き続けることしかできないブタ、ジッとしたまま動かない鶏、涙を流す馬。
折り重なるように倒れていく仲間を見ながら、次々に命を落としていく家畜たち・・・。
悲しい現実が、そこにはあります。
かつては何十頭もの牛がひしめき合い、餌やりや水やりなどの世話に追われ、賑やかであっただろう畜舎は、震災から半年を過ぎる頃、その数は3分の1になっていました。
牛や馬などの大型動物は、一度座りこんだら最後、二度とは立ち上がれません。
投げ出された四肢は、どの脚も正しい方向には向いておらず、折れているのは目に見えて明らかです。
死に方で一番苦しいのは、餓死だといいます。
床に散らばって、腐った藁は食べ散らかされ、柱や柵に使われた木材には歯形が付いています。
さらには、餌の匂いが付いているのでしょうか、ビニールや軍手を食べ、腹部がパンパンに膨れあがった牛もいました。
畜舎の中は死んだ動物の匂いと腐った藁の匂い、乾き始めた遺体にはウジが湧き、空腹を訴え、死んだ仲間に挟まれながら、助けを求めて賢明に鳴き続けます・・・。
傍らには生後数週間ほどの仔ウシ。横倒しになった牛にピッタリと寄り添っています。
倒れた牛は母牛でしょうか、既に死んでいるようにも見えます。
まさに、この世の地獄・・・。
行政には、普通に生きていられる健康な牛を処分しようと目論むのではなく、苦しんでいる、この牛たちをこそ、安楽死に導く方向で動いてほしいものです・・・。
保護されるペットと、見捨てられる家畜。
命の境界線はどこにあるのでしょうか・・・?