新たな悲劇(1)
狭い畜舎に閉じ込められたまま死んでいく家畜がいる中、一方では自由になった牛もいます。
この牛たちは、幸い(?)柵が壊れて外に出られるようになった牛や、ボランティアさんなどにより、鳴き続ける牛たちを見るに見かねて外に出してもらえた牛たちです。
自由になった牛たちは、思い思いに好きな場所へ移動し、青々と茂った草を食み、気ままに過ごしていたようです。
その中には、原発からの距離や方向などを鑑みて、かろうじて殺処分を免れ、市場に出荷が決まっていた牛たちもいたらしく、「余計なことをしてくれた!」と、後々、畜主さんと揉めることになったという背景もあったようです(汗)
手を下したボランティアの人たちにしてみれば、良かれと思ってやったことなのでしょうが・・・物事は思う通りにはいかないものですね。
しかし自由になったことで、却って新たな悲劇が生まれたケースもあります。
おそらく水を求めて引き寄せられたのでしょう、田んぼの水を引く用水路から水を飲もうとして、次々と牛が水に落ちたのです。
新たな悲劇(2)
深い用水路に落ちた牛は、自力では這い上がれません。
さらに皮肉なことに、牛は群れで移動することが多いため、1頭が水を飲もうと用水路に近づき、足を滑らせれば次々と牛は用水路に落ちていきます。
運悪く頭から落ちた牛は、水中で方向転換が出来ず、そのまま溺れ死にます。
足から落ちた牛はすぐに死ぬことはありませんが、ひっきりなしに流れて出る冷たい雪解け水に何時間も何日も晒され、地肌の色は変わってしまいます。
用水路の水は牛の身体の胸から下までの深さがあります。
逃げ場がない用水路の狭い側溝で、地肌の色が変わるほど冷たい水に晒されるのです!
これならまだ、畜舎の方が・・・いえ、どちらにしても地獄です。
溺れ死んだ仲間の死体は水に浮かび、足元に纏わりつきます。
常に流れ続ける冷たい水のせいで、死体は損傷し、水は汚れていきます。
せっかく外に出られて自由を手に入れたはずが、今度は飢えに加え、酷寒の寒さが加わるのです。
昼も夜も・・・。
そしてほどなくして、牛たちは最期のときを迎えます。