ペットレスキュー(1)
そもそも「ペット保護活動」の本来の目的は、飼い主と生き別れたペット、または迷子になったペットを捕獲、保護し、飼い主の元へ帰すまでの一時預かりを行う活動を指します。
しかし、震災のあった福島20キロ圏内で「ペットレスキュー」を行う、中山ありこさんたちの「ペット保護活動」は、通常とは少し異なります。
通常の保護にしても、全てのペットを救うのは到底無理。
どんなに気持ちがあっても、やはり保護できる数には限界があるのです・・・。
ボランティアで「ペットの保護活動」をしている人たちは、時間にもお金にも余裕がある人と思われがちですが、必ずしもそうではありません。
「ペットレスキュー」を行う人たちは、特別な人たちではないのです。
それぞれに家庭があり、家族がいて、仕事があって、生活がある人たちです。
ごくごく普通の至ってシンプルな生活を営む中で時間を作り、少しでも都合が付けば、車に積めるだけの餌や水を積み込み、何時間も掛けて被災地に乗り込むのです。
中山さんは震災当時、ガソリンも満足に入れられない状況の中、ネットや知り合いなどの情報を頼り、貯金を切り崩し、ときには車中泊や20キロ圏内にキャンプを張りながら「ペットレスキュー」を続けたといいます。
ペットレスキュー(2)
「ペットレスキュー」に発生する交通費、買い出しに掛かる費用、維持費など、基本的には全て自腹。
あとは、心ある人たちにより集められた寄付金と、僅かな物資で賄われるといいます。
それだけでも普通なら心が折れそうなのに、20キロ圏内に入るには張りめぐらされた有刺鉄線をくぐり、危険な場所に足を踏み入れなければなりません。
取材に同行していた森 絵都さん「「おいで、一緒に行こう」(文藝春秋)の著作者」が、現地で中山さんと合流したときは、もう一人の細身の女性が有刺鉄線を切る巨大なニッパーを買いにいっていたというから驚きです(汗)
「普通、取材しにこられる人は20キロ圏内までは付いてきませんよ?」と、中山さんに半ば呆れられながら20キロ圏内まで同行した著作者の森さんも、かなりのバイタリティの持ち主だと私は思います。
有刺鉄線を切る切らないの問題に関しては、同じくお仲間の地元男性により、別ルートを通ることで回避されたそうです。
ときには20キロ圏内内部で、パトロール中の自衛隊や警察に見つかるなど、かなり法律すれすれの際どいことをしながらの「ペットレスキュー」だったようです。
中山さんいわく「正しいか正しくないかは正直わかりません。ただ命を助けたいだけ!」
その言葉に、とてつもない力強さと同時に危うい儚さも見えて・・・。
少しだけ、息苦しさを覚えた瞬間でした。