「ネコは手放したらダメだ・・・」
中山さんと一緒にレスキューをしている男性は、南相馬市の出身、地元の男性です。
避難所に逃げる際に置いてきた自分の愛猫を探すため、中山さんたちと行動を共にしているのです。
ネコを捕獲するには、よほど弱っているネコでない限り、素手では捕まえられません。
警戒心の強いネコは、人が側に近づくだけで、どこかに身を潜め、姿を隠してしまいます。
そのとき活躍するのが「捕獲器」です。
要領はネズミを捕獲するときのような仕組みのもので、大きめの「ネコ版・ネズミ捕り器」です。
この捕獲器を男性の家の、ネコが好みそうな場所に設置し、毎日のレスキュー帰りの夕方、確認するのですが・・・なかなか捕獲器には掛かってくれません。
ネコは寒さにとても弱く、震災当時、夜はかなり冷え込むため、気持ちばかりが焦ります。
「ネコは手放したらダメだ・・・何があっても絶対に・・・」
苦しそうに男性の顔が歪みます。
倒れた形跡だけを地面に残してミイラ化しているネコ、ガリガリに痩せて首輪がタスキ掛けになっているネコ・・・日中のレスキュー活動で、ネコの死体を嫌というほど見てきているからこそ、募る不安・・・。
「今夜は冷えそうだ・・・」
身に沁みるような寒さは、動物たちのの体力を激しく奪います。
「どうか、無事に生きていてくれ・・・!」
空の捕獲器を見つめながら、その場にいた全員が同じことを願っていました。