「放射能 正しい知識で豊かな暮らし」

2011年5月。

震災から2ケ月ほど経ち、一時帰宅が始まる直前の南相馬市の町並みは、異様な空気を醸し出しながら存在していました。

町の至る所には動物の骨が散らばり、ミイラ化した犬やネコたちの死体が点在しています。

まだ肉片が渇ききっていない、小型動物の前足のみの亡骸。

大型犬のものとみられる、下あごだけの骨。

頭と背骨だけが綺麗に残された、小型犬の残骸。

頭部には白い毛がまだ残り、その遺体には首輪が付けられていました。

手足や尻尾はなく、おそらく野良犬や野良猫に持ち去られたものと思われます。

首輪には、犬の名前と飼い主の連絡先。

一目で、可愛がられていたペットだったことが分かります。

いつか迎えに来てくれるはずの飼い主を待ちながら、命の寿命が尽きてしまった子。

せめて苦しまずに、怖い想いをしないで亡くなったことを祈るばかりです・・・。

少し行くと、1匹の白い仔ネコの死体・・・。

生きていればまだ、母ネコのお乳から卒業しきれていないくらいの幼さです。

噛み傷や引っ掻き傷などの外傷はなく、どこかから歩いてきて、パタンとその場に倒れ込んだような亡くなりかたです。

きっとお腹を空かせ、空腹の末、その命は尽きたのだと思います。

仔ネコの死体から、僅か500mほど先、頭上のアーチ形の看板に、こんな言葉が書かれていました。

「放射能 正しい知識で豊かな暮らし」

何が放射能・・・皮肉なものです(苦笑)

その放射能で、どれほど多くの犠牲を払ってきたというのか・・・。

今となっては、悔やんでも悔やみきれない現実が物語っています。

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