「間に合わなかった・・・」

福島20キロ圏内、小高区村上。

津波被害で汚れた泥に足跡を残しながら、トボトボと歩く小さな犬を見かけました。

車から降りて近づいていくと、その場でパタンと倒れてしまいます。

慌てて駆け寄ると、既に瀕死の状態・・・。

急いで病院に連れていこうとしましたが、その車中、静かに息を引き取ったそうです。

あとで聞いた話によると、その犬は飼い主から捜索依頼が出ていている犬でした。

飼い主に、見つけた旨を伝えると、その日遅くか明日の朝には、迎えに行けると電話口で言っていたそうです。

「間に合わなかった・・・」

その犬のことは、何度か見かけていたのです。

いつも遠くから静かに見ているだけで、決して側に近づいてこようとはしませんでした。

半年もの間ずっと一人ぼっちで、それでも家の近くから離れずにいたのは、いつか飼い主が迎えに来てくれることを少しも疑っていなかったからだと思います。

「気付いてあげられなくて・・・ごめんね」
「会わせてあげられなくて・・・ごめんね」
「助けてあげられなくて・・・ごめんね」

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